外壁塗装の【溶剤による塗料の分類と特性】メリット・デメリットを詳しく解説

溶剤とは塗料の成分の一つで、塗料の他の成分を溶かす役割があります。

この記事では、溶剤の役割、特性、種類、および住宅用塗料としての弱溶剤系塗料と強溶剤系塗料について詳しく解説します。

目次

溶剤とは?

溶剤とは、塗料の成分の一つで、塗料の他の成分を溶かす役割を果たし塗りやすくする役割があります。

塗装後の溶剤が蒸発し乾燥すると塗料が硬化して、表面に塗料の膜(塗膜)ができます。

一般的には「溶剤」のことを「うすめ液」と呼んでいます。

溶剤の役割

  1. 塗りやすくする: 溶剤が塗料に混ざることで、塗料が液体の状態になり、刷毛やローラーで塗りやすくなります。
  2. 乾燥を調整する: 溶剤が蒸発する速度によって、塗料の乾燥速度が変わります。これによって、作業の進めやすさを調整できます。
  3. 塗料の性質を調整する: 溶剤の種類によって、塗料の光沢や透明度などの性質が変わります。

溶剤の種類と特性

水性溶剤(水性塗料)の特徴

水性溶剤(水)を使う塗料は、水性塗料です。
水性塗料には以下の特性があります。

水性塗料のメリット

  • 下地を傷めない:
  • 環境に優しい:揮発性有機化合物(VOC)の排出が少ないため、環境への負荷が低い。
  • 低臭性:化学的な臭いが少ないため、室内での使用も適しています。
  • 乾燥が早い:乾燥が早く、作業効率が上がります。
  • 清掃が容易:水で洗い流せるため、ブラシやローラーの洗浄が簡単です。
  • 色の種類が豊富:色の混ぜ合わせが容易なため、多岐にわたる色彩が選べます。

水性塗料のデメリット

  • 耐久性が低い:水分が主成分であるため、油性塗料に比べて耐久性が低い場合がある。
  • 仕上がりに限界:艶出しなどの特殊な仕上げには向かない場合がある。

有機溶剤(油性塗料)の特徴

有機溶剤を使う塗料は一般的に水性塗料に対して油性塗料と呼ばれます。
油性塗料に使う溶剤は有機溶剤と言います。

一般的には有機溶剤の薄め液のことを「シンナー」と呼びます。

一般住宅の外壁塗装で扱う油性系塗料には弱溶剤系強溶剤系がありますので、別々に解説をしていきます。

  • 弱溶剤を使う弱溶剤系塗料は、乾燥がやや遅く、臭いが少ないが、ものを溶かす力が弱い。
  • 強溶剤を使う強溶剤系塗料は、速乾性があり、臭いが強く、ものを溶かす力が強い。

住宅用の塗料としての弱溶剤系塗料

住宅用の塗装で扱う油性の塗料はほとんどが弱溶剤系の塗料です。
屋根や外壁はもちろん雨どいや軒裏・水切りなど、比較的どんな場所でも使用されます。

弱溶剤系塗料は、溶剤の量が少なく、揮発性有機化合物(VOC)の発生が少ないのが特徴です。
そのため、環境への負荷が低く、人体への影響も少ないとされています。

弱溶剤系塗料の種類・使わる場所
  1. 屋根:金属屋根はもちろんですが薄型スレート(コロニアル)の屋根でも塗替え時の塗料としては水性系よりも弱溶剤系塗料が使われることが多いです。
  2. 外壁:外壁には水性系が多く使われることが多くなったとは言え、まだまだ弱溶剤系塗料で外壁を塗る事もあります。近隣と密集しているかなど地域差があるようです
  3. その他の外壁パーツ:屋根や外壁以外で塗る必要がある細かいパーツ(細部塗装や附帯塗装と言われる部分)は、おおむね弱溶剤塗料で塗ることが多いです。
弱溶剤系塗料のメリット
  1. 乾燥速度:弱溶剤は水と比べて揮発性が高く、強溶剤ほど早く塗料が乾燥せず、ほどよい乾燥速度で作業を進めることができます。
  2. 広い用途:弱溶剤は住宅用の塗料としてあらゆる場所で対応可能です。
  3. 対応できる色数が多い:水性塗料では対応できない発色の良い鮮やかな色が作れます。
  4. 密着力が強い:塗装下地と塗料との密着力(接着力)が強く、塗装後のハガレが起きるリスクが水性塗料よりも少ない。
  5. 下地を侵しにくい:溶剤としての溶解力が弱いので、既に塗装済みの箇所に塗り重ねる場合に、下地の塗料を溶かしたりするリスクが少ない。(溶解リスク:水性<弱溶剤<強溶剤)
  6. 環境への配慮:VOCの発生が少なニため、環境への影響が小さいです。
  7. 安全性:人体への影響が少ないため、家庭でのDIYなどにも使いやすいです。
弱溶剤系塗料のデメリット
  1. 臭いがある:強溶剤ほどではありませんが、揮発する際に強い臭いが発生します。住宅の屋根では多く使われますが、外壁に塗る際には注意と覚悟が必要です。

住宅用の塗料としての強溶剤系塗料

強溶剤系の塗料を住宅用の塗装で扱う事は少なくなりましたが、防水材やラッカー系ニスなどでは今でも使用されます。

強溶剤系塗料の種類・使わる場所
  1. ラッカー系ニス: 木材の美しい仕上げを求める場合に使用されることが多いです。
  2. 防水材: 強溶剤系の防水材は、耐候性と耐摩耗性が高く、屋上やバルコニーなどに使用されます。
強溶剤系塗料のメリット
  1. 乾燥速度: 強溶剤は揮発性が高いため、塗料の乾燥を速めることができます。
    特に防水材やラッカー系のニスでは、この特性が重要です。
  2. 耐久性: 強溶剤を使用した塗料は、耐候性や耐摩耗性が高く、防水材などにおいて重要な役割を果たします。
強溶剤系塗料のデメリット
  1. 強い臭い:揮発する際に強い臭いが発生するので、現在では住宅の外壁や屋根に塗る塗料として強溶剤系の塗料を使うことは稀です。
  2. 施工性:乾燥が早いため施工時に時間を掛けられず、塗り継ぎや段差が起きる事がある。
  3. 下地を溶かす可能性が強い:溶解力が強いため、既存の塗装(下地)が弱いと塗っている間にも下地が溶けたり縮んだり剥がれたりと、正常な塗装が出来ないことが多い。
  4. 健康への影響:強溶剤は揮発性有機化合物(VOC)を多く含むことがあり、長期間の露出は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
  5. 環境への影響:強溶剤の使用は、大気汚染などの環境問題を引き起こすことがあります。
  6. 取り扱いの難しさ:強溶剤は揮発性が高いため、取り扱いには注意が必要です。
    適切な換気と保管が求められます。

まとめ

溶剤は塗料の重要な成分で、塗料の性能や塗装の仕上がりに大きく影響します。
特に住宅の外壁塗装では、外壁を水性塗料で塗るか、弱溶剤系塗料で塗るかで迷うシーンがあるでしょう。

どちらを選択するかは、下地の素材と劣化の状況を専門家に判断してもらい、あとは塗装中の臭いを気にするかしないかが施主による判断になるでしょう。

外壁塗装においては、これらの溶剤による塗料の特性を理解し、希望に合った選択をすることが重要です。

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